失恋ソングは腐るほど世に溢れている。
だから、私の失恋なんて、
ありふれてあふれだしてあわとなる、
そんな日常だ。

わかっている。

悲劇のヒロインになれるほど、
酷いことなど何一つされてない。
世の誰もが羨むような、
お似合いの仲良しだったわけでもない。


ただ好きだった。
あの人が、
本当に本当に好きだった。

一緒にいて、
本当に本当に幸せだった。


だから、それを支えに、
これから頑張ればいいだけなんだ。
私がきちんと歩き出すべきなんだ。


でも、
まだ歩けない。歩きたくない。

脱け殻みたいな身体で、
幸せだったころの思い出に浸って、
ぐたぐだと泣いていたい。
あの時、ああすればよかったと、
しょうもない後悔に苛まされていたい。

この苦しさを手放したら、
かろうじて残っているあの人とのつながりが消えてしまう。
こんな苦しさにすがるほど私とあの人との間には、もう何もない。