ノックの音。



「小笠原です…」


扉の向こうから知弥の声が聞こえて来た。久しぶりに、訊く知弥の声にドキッと鼓動が跳ねる。



「どうぞ…」
私に代って、亜希都さんが扉を開けてくれた。


知弥がキレイな花束を抱え、入って来た。



「明日、退院されるとのコトで、見舞いに来ました…」


「ありがとうございます」


知弥はベットで躰を起こす私にゆっくりと近づいてきた。

そして、紫色の瞳で申し訳なさそうに、私を見つめる。


花束を受け取り、しばし、見つめ合う。


「その花…花瓶に入れないと…」


「うん」