アスファルトを叩く激しい雨音のせいで、昨夜は熟睡とはほど遠かった。

朝になって雨はあがったものの、風は半端なく冷たい。

薄手のトレーナーに短パンという超ラフな格好で外へ出たことを激しく後悔した。

どこからどう見ても、五感がマヒしたまぬけな男だ。

可燃ゴミの山頂にゴミの入った袋を放り込むと、一秒でも早く部屋に戻りたくて、くるりときびすを返した。

そのとき、門の奥に人影が見える。

誰かがこちらへ近づいてくる。

メガネをかけたふっくらとした女性。

「あらあら、おはようございます」

声の主は村上さんだった。

隣の隣に住むシングルの女性(あくまでオレの推定)。

マヤが夜な夜な男をとっかえひっかえ連れ込んでいるという、とてつもないゴシップを吹聴した人物。

彼女もゴミの入った袋を携えていた。

今日は世界で一番有名なネズミの恋人のトレーナーだった。

薄手のナイロン素材を通して、冷風がオレの身体にタックルを仕掛けてくる。

「ほんとに今日は寒いわね。風も強いし。暖かい季節が恋しいわ」

オレの情けない身なりを観察しながら村上さんが同情するように言った。