涙をこらえるようにして、声を絞り出す。

「じゃあオレ、戻るから・・・」

野太い声の男がマヤのもとを去った。

コツコツコツという足音が遠のく。

何だこの音・・・

廊下のコンクリートと金属が擦れる音。

スパイクみたいな靴を履いているのか・・・。

やがてマヤが「フー」と小さく溜息をついた。

私が泣いたってしょうがないじゃん・・・そう自分に言い聞かせるみたいに。

バタンとドアが閉まる。

一変して静寂が訪れた。

気がつくと、オレの頬にも冷たいものがつたっていた。

何もできない自分がもどかしくて仕方なかった。