出会う前のキミに逢いたくて

「会社帰りにバイトしてる訳って何です?」と単刀直入に質問をぶつけてきた。


店長が「話していいのか?」という顔をおれオレに向ける。


やがて「いいですよ」とオレが言う前に勝手に話し始めた。昔からそういう人なのだ。


「こいつの彼女が病気になっちまって。治療費を捻出するためなんだって。今どき泣かせるでしょ?」


「大変ですね」


原田君が気の毒そうな顔を浮かべる。


「そういうキミもプロに入る前、大きな病気になったんだよね?」


店長は甥っ子に話しかけるような図々しさで一流プロ野球選手に尋ねた。


そのときの原田君の表情の変化をオレは見逃さなかった。


鋭く目が光ったのだ。


何かに気づいたかのように。


いくつもの点が一つの線に結ばれたときのように。