出会う前のキミに逢いたくて

「この店には何度も来てますけど会ったことないですよね?」


「はい。今日働き始めたんです」


「こいつ普段は会社員なんですよ」
再び厨房から店長の声。
「オレが昔務めてた会社の後輩。訳あってバイトと掛け持ち」


「ダブルヘッダーだ。頑張りますねえ」


そこへ全部入りラーメンが運ばれてきた。


さすがはプロスポーツ選手と感心するほど、原田君はそのラーメンをあっという間にたいらげた。美味しそうに麺をすする様子に店長が目を細める。


料理人冥利に尽きる瞬間なのだろう。


その後も、原田君はやけにオレのことを知りたがった。