出会う前のキミに逢いたくて

「前にどこかで会いませんでしたか?」


「いや、あのう、そのう・・・」混乱した。頭が二つにパカッと割れ、お花畑が広がりそうだった。よくわからないけど。舌がもつれ、うまく言葉が出てこない。


「思い出した! オレが大学の頃、取材に来てくれた記者さんじゃないですか?」


「はい。よく覚えてますね」


「やっぱりそうだ」


「オマエにそんな過去があったなんて意外!」厨房から店長の声が飛ぶ。


三人連れのサラリーマンが「ごちそうさん」といって暖簾をくぐる。


けっして望んだわけじゃないけど、店の中はオレと原田君の二人になった。