出会う前のキミに逢いたくて

バイト初日から考えもしなかった事件が起きた。


終電に乗り遅れまいと人々が急ぎ足で歩道を駆けるころ、ふらっと長身の男が現れた。


常連で面識があるらしく、店長に片手を上げる。


店長も普段はおよそ客商売とかけ離れた仏頂面のくせに笑顔を向けている。


オレは店長の隣に立ち、口から飛び出そうな心臓を必死で押さえた。


現れたのは原田君だった。