出会う前のキミに逢いたくて

「本当にごめん。急用ができちゃってさあ」


「ふーん。どんな?」


以前なら、アドリブで嘘つくことなんて、できっこなかった。


けど、1年前という過去に一旦戻り、偽りの自分を作り上げたおかげか、すらすらと嘘がつけた。


喜んでいいのか、どこか微妙だけど。


「実は先輩に呼び出されてさぁ。


もちろん、男の先輩だよ。


しつこく失恋話を聞かされたってわけ。


最悪だろ?


しかも人目もはばからずワンワン泣くんだぜ。


で、もっと最悪なことに、途中で携帯を落としちゃってさぁ」


最初は半信半疑だったマヤも、真に受けたみたい。


「じゃ、しょうがないね…」


結局、今晩夕食をおごることで片がついた。