角のシートに背中を預ける。


向かいのシートも乗客はまばらで、窓からは景色がよく見渡せた。


空は真っ白な雲で覆われていた。


停車してドアが開くたびに冷たい風が首筋にあたった。


その風が冬の到来を静かに、克明に知らせている。


駅から歩いてA大学のグランドに向かう。


練習場では部員が列を作り、白い息を吐きながらランニングしていた。


先頭を、頭一つ背の高い原田くんが引っ張っている。


大きな声を出しながら。


ただちんたら走ってるだけじゃなく、そんな時でさえも、闘志をどこかに隠し持ってるように見えた。


どこかに短刀を隠し持ってるみたいに。


後ろを走る後輩たちに、自分の生き様を見せつけるかのように。


確かに彼は格好いい。


野球の才能もある。