彼は憎くてたまらない恋敵なのだ。


でも、中野くんとの投げあいを見て、彼に対する印象が少しだけど変化した。


豪快な投げっぷり。


自分のミスで呆気なく撃沈する負けっぷり。


試合後の談話で素直に中野くんの力を認めた潔さ。


「男が男に惚れる」なんて表現があるけど、それに近い感情かも。


それはちょっとマズいんだけど…。


彼はもうすぐ、マヤのまっさらな身体を抱く。


まだ誰も触れたことのない、けがれのない肌を。


ターミナル駅でJRから私鉄に乗り換える。


朝のラッシュの真っただ中だけど、下り電車は回送列車かと思うほどガラガラだ。