マサキが投じた初球。


縫い目が指に引っかかったのか、ボールがキャッチャーミットの前で大きくバウンドしたのだ。


前田くんの巨体を持ってしても止めることができず、白球はバックネットまで転々と転がった。


三塁ランナーが手を叩きながらホームイン。


まさかのサヨナラ暴投・・・。


三塁側スタンドでは大歓声があがり、一塁側スタンドはしんと静まり返った。


お母さんと目があう。


何と・・・お母さんは手を叩いて笑っていた。


「まったく、しょうがない子だねぇ」とでも言いたげに。


マウンドを降り、ベンチに戻るマサキもまた、クスクスと笑っていた。


さっきまで鬼みたいな顔してたくせに。