でも、お母さんはいたって冷静だった。


穏やかな表情でグランドを見つめている。


マサキと同じように、お母さんもまた、芯の強い人なんだろうなあ。


打たれたら打たれたで仕方がないよ。


あんたにとって悔いの残らない試合なら、結果なんて二の次なんだよ。


マウンドにそんな言葉をなげかけてるようにわたしには見えたのだった。


なんて強い親子なんだろう。


野手の輪がとけ、審判がプレイ再開をコールする。


次は好打者で知られるリーグ屈指のスラッガーだ。


その打者はボックスに入る直前、胸に手を当て、自分を落ち着かせていた。


彼らの緊張感が客席にも伝わってくる。


やがて、運命の1球は投じられた。


用意されていた結末は、誰も予期しなかった、呆気ないものだった。