年季の入ったレンガ色の外壁。


全体を取り囲むようにそびえ立つ6基の照明灯。


数多くのドラマを作った歴史ある東京スタジアムにオレは足を運んでいた。


試合までに随分まだ時間はあるというのに球場の外に多くの人の姿がある。


スポーツ音痴のオレでも知っている。


開場は大正15年。


アマチュア野球においては大学野球の主要球場として長年使用されている。


趣のある球場だと思う。


「取材の方はこちらに会社名と部署名をご記入ください」


関係者入り口を整理する係員の指示で、出版社名と雑誌名、そして自分の名前を走り書きした。


腕章を受け取り、揃いのウインドブレーカーを着たもぎりのお兄ちゃんたちの脇をすりぬける。


すでに内野のスタンドは埋まりつつあった。


さすがに決勝ともなると、熱気や注目度が一気に増すのだろう。


組み合わせは予想通り、六大学リーグのW大学VS帝都リーグのA大学。


バックネット裏の記者席を陣取った。


グランドでは原田くんが所属するA大学がバッティング練習を始めていた。


一塁側ブルペンでは原田くんがウォーミングアップ投球。


隣席の記者はつまようじをくわえ、スポーツ紙を凝視している。