「悪い夢でも見たんだろ」


「夢なんかじゃないよ」


わたしは頬を膨らませて強く反論する。


「夢だよ。夢に決まってるだろ。だってほら」


ラベンダーに包まれた草原に一筋だけ伸びた小道に立ち止まるマサキ。


やがて広大な山脈を背にして、ストレッチをはじめた。


「なによそれ」


予想外の行動に私は思わず吹きだした。
夢の中でこんなにも本気で笑ったのははじめてだ。