それにしても、なんてしぶとい勧誘なんだよ。

ふつうは2回、多くても3回チャイムを鳴らしてリアクションがなけりゃあきらめるだろ。

ところがこの新聞屋さんの勧誘ときたら、なかなか引き下がろうとしない。

平気で5回も6回もチャイムを鳴らし続けてやがる。

オレはそのたびに殺した息をさらに押し殺さなきゃいけなかった。

スッポンも顔負けのしつこさだ。

オレは身動きひとつせず、部屋の真ん中に突っ立って、雨雲が立ち去るのをじっと待った。

一件でも多く契約をとりたいっていう粘り強さは認めるよ。

けど、百万回土下座されても新聞なんて取らないよ。

誰が好き好んで、『古新聞』をわざわざお金出して買うのさ。

情報が新しくないんだから、もはや「新」聞とも呼べないか。

いやいや、それ以前に今の時代、わざわざ新聞というやつを取らないだろう。

テレビのニュースも同じだ。

繰り返しになるが、1年前のニュースなんてニュースじゃない。

単なるアーカイブスだろ。

マヤがバージンじゃないと知った夜、オレは酒を浴びるほど飲み、自分自身を深い眠りに誘い込んだ。