「マヤちゃんはうちに戻ったほうがいいよ」
という前田のアドバイスで自宅に戻ることにしたのだ。

前田くんはわたしを気遣って、練習場から自宅までの道をわざわざ付き合ってくれた。

前田くんは真っ白な練習着のまま電車に乗った。

靴もスパイクのままだ。

慌てていて履き替えるのを忘れたらしい。

そういうところが前田くんらしい。

「お茶くらい飲んでってよ」

このまま帰すのは忍びなかった。

「本当にいいよ。オレなんかに気を使う必要ないよ」

わたしを見据え、前田くんが首を小刻みに振った。

いくら友達とはいえ、目の前の女性は親友の彼女。

親友の彼女の部屋で2人きりになれるほど、前田くんは図々しくないみたい。

でも、このまま「さよなら」するのに気が引けるわたしがいた。