「入って」

そう言ってドアの前で手招きすると、

「オレはここで失礼するよ」と、前田くんが予想通りの返答をした。

あの直後、マサキは練習を切り上げ、医務室に運ばれた。

後輩に肩を担がれるマサキの姿はとてもとても痛々しかった。

グランドを去るとき、マサキはわたしの前を通り過ぎた。

けど、わたしは目を合わせることができなかった。

本当はちゃんと彼の姿を見守るべきだったと思う。

それなのにわたしときたら、そのときも現実から目をそむけてしまったのだ。

どこまでも弱い自分。

世界最弱の存在がこのわたし。

再び深い深い自己嫌悪に陥った。

でも、不幸中の幸いというべきか、前田くんの話では、そんなに深刻な状態ではないとのことだった。

とりあえず、大事を取ってベッドに横になってるとのこと。

本当はすぐそばにいて励ましたかったけど、他校の私が医務室に入るわけにはいかなかった。