寒い夜には【短編】




「河野じゃねぇか、元気か。

俺は大学に上がってから大変だ」


『九条さん…』


先客が居た。

それは倉太の部活の先輩だった。


「もう、一年経つんだな」


『…そうですね』


あの日以来、訪れることはなかった

北高校テニスコート。



「さっき廉や本田が来てたぜ」


『そうですか…、皆

同じこと考えているんですね』


「だな」


今でも彼の面影があるコート。

よく彼の姿を探してた。


まだそこでテニスの自主練習を

しているような気がして。



「俺は先に会いに行くぜ。またな」


『はい…』


九条さんと別れてもなお、私は

観客席から動かなかった。