「「礼央、私のこと、お姉ちゃんて呼ぶんだよね。」

「それだめだね、どうしようか?」

絵理香は自分のことを、礼央に何と呼ばせようかと翔と相談した。

翔は腕組みをして、考え込むポーズをする。

「絵理香のことはお母ちゃんと呼ばせて、ついでにパパもやめてお父ちゃんにしよう。礼央が中学生になってもパパって言ってたら気持ち悪い。卒業!」

「お母ちゃんね、気に入った。」

次の日の朝、眠い目をこすりながら起きてきた礼央に発表すると礼央はキョトンとしていたが、「うん」と素直にうなづいた。

翔の「お父ちゃん」はすぐ馴染んだ礼央だが、絵理香の「お母ちゃん」はなんだかぎこちなかった。

礼央との間には、見えない板が一枚ある感じだ。まあ、始まったばかりだから…と気にしないように務めた。

楽天的なのは、絵理香の美点のひとつなのだ。



礼央が絵理香と翔の子供になってから二週間ほど経った日。

絵理香は礼央の前髪が伸びて、目にかかってしまっていることに気づいた。