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『はい藤崎です。あら?英人くん?』
電話の受話器から優しい物腰で喋る伊織のお母さんがいた。
「はい、お久しぶりです」
『しばらく見ないうちに声まで大人っぽくなったわね!もしかして今日の帰りの時の事で電話してきてくれたの?』
「っ!?」
なんでそれを…。
『なんで?って思ったでしょ?それぐらい私でも分かるわよー、英人くん昔っから伊織の事好きだものね♪』
そこまでバレてるか…。
「あの…この事伊織には…」
お母さんにはともかく伊織にはバレるとさすがにまずい。
『大丈夫。ちゃーんと口裏合わせといたから!』
「ありがとうございます」
『これからもうちの娘を不審者から守ってやってね♪』
そう意地悪な口調で言われる。
「~~…はい…」
『ふふっ頼もしいわね!それじゃあ…』
「はい、失礼します」
そう言って電話をそっと切る。
あの人と話してると調子狂うんだよね…。
何でもお見通しって感じで。
しかも声が伊織に似てるから余計だ。
「はぁ…」
明日からこんなんでやっていけるのだろうか…。

新たな悩みの種が増えたとある日の事――。