「「…………」」
あぅー…。
なんか英兄さっきから変だよ…
いつもなら自然と弾む会話も全くない。
なんか怒ってるのかな?
「ねぇ、伊織?」
「ひゃうっ!?な、何?」
うぅ…いきなり呼ぶから変な声出た…。
「さっきの男子って…友達?」
さっきの男子?
「もしかして、淳?」
思いつく人の名前を言ってみる
「っ…。多分その人」
淳の名前を口にした途端英兄が少し嫌そうな顔をしたのは私の見間違いだろうか。
「うん私の前の席の人なんだ。なんか女の子と喋ってるみたいで楽しいの♪」
「…女の、子?」
「?うん?」
顔も整ってるけど女の子の格好似合いそうだし…。
「ふっ…くくく…。それならいいんだ」
私の言葉を聞くと一人笑い出す
「…??」
な、なんか話がよく分かんないよ?
でも…いつもの英兄に戻ってよかった。

そう、この時の私は何も知らなかったし分からなかった。
英兄が教室まで迎えにきてくれた本当の意味も、
淳の名前を口にした時に見せたあの表情の意味も、
淳を女の子みたいと言った時に見せた笑顔の意味も…。
分かっていたら私はどうしたのかな?
…やっぱり分からない。

この意味を私が理解できる日はそう遠い話ではなかった―。