お兄ちゃん、弟、妹、私、毎日誰かが殴られ、詰られ、汚い言葉で脅し、お母さんに何度も離婚してほしいと頼んだ。
でもお母さんに選択肢がなかった。
お母さんは末期の癌だった。私が小学校低学年の頃に初めて癌になり、中学の頃に再発。発見が遅く、骨にまで転移し手術が不可能だった。
いつもお父さんの暴力から守ってくれる、お母さん。
私はいつそのお母さんがいなくなってしまうのかと、不安に押し潰されそうになりながら、生きてきた。
癌の治療には莫大なお金がかかり、抗がん剤を打ったあとはとても一人で運転して帰れない。
お母さんが生きるためには、お父さんが必要だった。