帰り道。
俺の名前は 多岐 で、隣の彼女は 春風。

生まれた時から家が斜向かいで、同い年。親同士が仲が良かったために、子供の俺らも仲が良かった。

生まれた時から小さかった春風の手を引くのは気づけば自分の役目で、それに不満なんてもったことは無かったし、年頃になってもこの手を離そうとは思わなかった。

中学にも上がれば、この関係が歪んでいるだなんてことは分かってきていた。付き合っているのかと聞かれることだって少なくはない。
しかし俺達は別に付き合っているわけではなかった。

春風は知らないが、多分二人とも異性を気にしたことなんかないだろう。多分結婚しろと親にでも言われれば 出来ると思う。

それでも付き合いもしないのは、これがもはや当たり前のことに過ぎなかったからだ。


「春」

「んー?」

「明日はもう少し早く行くからな」

「はぁい」


登下校もいつも一緒で、二人とも帰宅部で頭も良かったから 支障はなかったのだ。
多岐が助っ人で部活に参加する時も、春風はそれが終わるまで見学をしていた。

きっとこの関係は社会人になるまで続くだろう。
自立すればきっと、二人で暮らす。当たり前のように多岐はそう思っていた。


これから二ヶ月の間は。