営業部と契約部は、犬猿の仲と言っていい。

「はああ、やっぱ駄目だったか…」

目黒さんが携帯を放り投げて、天井を仰いだ。
その様子は視界に入ってはいたが、俺は忙しいふりでモニターから目を離さなかった。愚痴のはけ口になるのはごめんだ。

「何、目黒。お前、また契約部とやり合ってんの?」

呆れたように笑いながら言うのは、大崎さん。うちのグループのリーダーだ。

「やり合って、というか…なんであそこってあんなに融通がきかないんですかね?」
「ああ、まあなあ」

大崎さんが苦笑するのも無理はない。契約部の問題以前に、目黒さんの筋が通ってないからだ。

「でも、今は大分営業ニーズに対応してくれるようになったよ。昔はお役所仕事で本当に融通きかなかったからな。…市ヶ谷がいてくれるおかげだな」

その台詞で、俺は彼女を思い出した。

それから、目の前のモニターをざっと見直して、プリントアウトを始める。

これの見直しをしたら、細部の確認の為に、俺も契約部へ電話だ。


………彼女が出ないかなあ、とチラリと思った。