「圭吾、今ではすごい活躍ぶりだね。」

「そんなことないよ。」

何年かぶりに会ったので、お互いに

緊張して話が進まない。そんな中、

先に話したのは圭吾だった。

「あのさ、まりあ。」

「なに?」

「聞いて欲しいことがあるんだけど。」

「う…うん……。」

あたしは息を飲み込んだ。

「俺さ、自分で言うのもあれだけど、今では有名な陸上選手じゃん。きっと会えない日や、電話もメールもできない日がたくさんあると思う。でも、今の俺がいられるのは、まりあのおかげだと思う。」

「それは違うよ圭吾。あたしはあのとき、圭吾の夢を壊しちゃったんだよ。でも、圭吾は自分の力で努力してここまできたんだよ。あたしのおかげなんかじゃない。」

「確かに俺もそうだと思う。でも、そんな俺を支えてくれたのはまりあの強い想いだと思う。…俺、まりあとならこの先ずっと一緒に笑って生きていけると思う。」

そう言って圭吾が出したのは、結婚指輪だった。

「…圭吾、これは……。」

あたしは何も考えられなくなった。

ただ、嬉し涙だけがこぼれ落ちる。

「俺と"ずっと一緒に生きていこう。"」

そう言い切った圭吾の顔は、照れなんて

1つもない本気の顔だった。

「…はい……。」

あたしは迷いもなく、

圭吾の真剣な想いに答えた。