鳴瀬先輩は一度俺を見てからもう一度姉御の方を見て、フッと口元を緩めた。
「その王子様に言っとけ。
ウチのエースはバスケと栞奈のことしか脳にない馬鹿だって」
ちょっ……先輩!?!?
酷くないっすか……!?
「……けどな、絶対お前らには負けねぇから。
ウチには馬鹿しかいない。
バスケ馬鹿の意地、見せてやるよ」
鳴瀬先輩の宣戦布告。
相手は毎年決勝リーグに出ているような強豪校だが、誰一人情けない顔は見せなかった。
寧ろ好戦的な笑みを見せて姉御の方を見てちた。
「……そうこなくちゃ」
姉御も満足したように頷き、鳴瀬先輩の顔を見てニヤッと笑った。
「ウチの部長が過保護なパパなら、あなたは子供に振り回されてるお疲れなパパさんね」
子供に振り回されてる……お疲れなパパさん?
何だそりゃ……。
「苦労してるでしょ。
顔に出てるわよ」
「分かるのか!?」
「とくに、『た』で始まって『と』で終わる後輩に手焼いてるでしょ」
『た』から始まって『と』で終わる後輩……?
た……た……たかせやまと……。
俺か!!
「苦労人って大変よね」
「姉御と呼ばせてください……」
「却下」