『栞奈ってよく大和の背中に抱きつくよな』

『人の背中って温かいんだよ。
その温かさが好きなんだ~』

『へ~、じゃあ俺は?
俺の背中も温かい?』

『ちょっと待ってね…………わぁ!
温かい!
アキ君の背中すっごく温かいよ!』


「……ってことがあったよ」

「アイツ……」

「大和、顔怖い……」


栞奈が少し怯えたような顔をしながら俺を見た。


「アキ君の名前……聞くだけでも嫌なんだね」


俺が怒ってる理由。

別に栞奈が暁弥に抱きついたからとか、そんな小さい理由じゃない。

アイツ……アイツの名前を聞くだけで顔が強張る。


「大和……」


栞奈がそっと優しく俺の手を握る。

温かい。


「……大和はアキ君のこと、本当に嫌ってるわけじゃないよね?
だって……あんなに仲良しで……」

「栞奈」


自分でも思ってみなかったほど鋭い声が出て、栞奈の体がビクッと揺れた。


「アイツの話はもうするな」


聞きたくない。

アイツの名前すら。

いつの間にか、こんなに嫌になってた。