栞奈は何も言わなかった。

ただ黙って俺のそばにいてくれた。

部活に行かなくていいのか、とか

今どうなってる、とか……

いろいろ聞きたいことはあるけど、今はただそばにいてほしかった……。


「……大和は昔から変わらないね」


ポツリと栞奈が呟いた。


「……何が?」

「……全部。
他人思いで、優しくて。
バスケが大好きで。
でも、バスケが好きな人はもっと好き」


でしょ?と栞奈が聞いてくる。

……昔から、栞奈には全部お見通しだ。

普段はすごい鈍くてドジで泣き虫な甘えん坊なのに。

……俺のことは何でもすぐに分かる。


「……石尾君にアキ君のこと言わなかったこと……間違ってないと思うよ」

「……ま、お陰でこんなんになっちゃったけど」

「……間違ってなかったけど……でも、大和はいつも自分を犠牲にしすぎだよ……」

「栞奈……?」


心なしか栞奈の声が震えてる気がした。

不思議に思って栞奈の顔を見ると……泣きそうな顔をしていた。


「自分を犠牲にしてまでする優しさは……本当の優しさじゃない……」

「……石尾の夢は壊したくない。
いいんだよ、これで」

「よくない!!」


突然大きな声を出した栞奈。

……そのチワワのような大きな瞳は涙でいっぱいになっていた。