栞奈は俺を連れて体育館から少し離れたところにあるベンチまで来た。

休んでて!

そう言い残して栞奈はどこかへ走って行った。


俺は特にすることもなく、ボーッと空を眺める。


……ムラケン、大丈夫かな。


いや……みんな俺よりムラケンの言うことを聞く。

俺があそこにいるより断然いいだろう。


……疲れた。


大好きだったはずの部活が楽しくない。

寧ろ苦痛でしかない。


……石尾、ショックだったんだろうな。

暁弥に憧れて入ってきたのに、いざ入部してみたらもういなかったんだもんな。


アイツ……本当のことを言ったらどんな反応するんだろう。

……きっと、今以上にショックを受けるに違いない。

なら……黙っておこう。

アイツにまでバスケを辞めてほしくない。


そんなことを一人で考えていると、頬に冷たい物が当たった。


「冷たっ……」


振り返ってみると、栞奈がスポーツドリンク片手に笑顔で立っていた。


「なんだ……栞奈か」

「あげる!
あたしの奢りだよ」


俺は栞奈からスポドリを受け取り、グビッと一気に飲んだ。

栞奈はゆっくりと俺の隣に座った。