「まだ進級したての頃だったかしら。
……栞奈、いつも言ってたの。
大和が辛そうだ……って」


中三の春……。

身に覚えはある。

栞奈が俺のことを心配してたのも知ってる。


「……いつも泣きそうだったんだけど、一回だけ栞奈が本当に泣いたことがあってね。
大和が壊れちゃいそうって……泣きながらあたし達に訴えてきたわよ……」


あれは今でもはっきり覚えてる、と姉御は言った。


「あの後……少しの間部活に顔出さなかったんでしょ?
大和に限って……とは思ったけど、もしかしたら辞めちゃうんじゃないかって……」


……思い出す。

いろんなものに追われ、大好きだった部活を休んだこと。

あの時はストレスが半端なかった。


「……あんだけ心配かけたんだから、ちゃんと守ってあげなきゃダメよ。
あたし、栞奈のこと一番幸せにできるのは大和だって信じてるから」

「……当たり前っすよ」


誰にも渡さない。

ずっと……ずっと自分の中で留めてきた気持ち。

あの日の約束を果たすため、俺は一歩前進する――