露店を上から見下ろすと目から残った涙が落ちそう。

こんな日は、本当に涙なんて枯れて欲しい。
そう思っていると店番の人が手を出す。

その手はグーに握りしめられていて、その手を見ても男女の区別がつかない。

「願いがあるなら、このお守りをもっていきなさい…」

グーになっていた手が開かれると手には古めかしいお守りがあった。

声は女の人の声で、少しお歳を召したような印象。本当に謎だ。

「あ、あの、その…」

謎すぎて、怪しすぎて何も言えない。

「お代はいらないから…」

そう言うと、私の手をとって手の平に乗せる。

「それを寝る時に握りしめて眠りなさい。そしたら願いが叶うから…」

そう言うとローブを深く被り、下を向いてしまった。

何が何だか分からず、理由を聞こうとしたけどいくら話掛けてもそれからは答えてくれなかった。

凶が削がれたとはこの事かもしれない。

振られた事実が少し薄まったようで、本当はそんなはずないのに。
涙って案外、簡単に止まるものだ。

そう思いながら帰りの帰途についた。