きちんと座って漫画を読むというのはあまりしたことがないから、すぐに肩がこり始めた。
「一組ってどんな感じ?」いつの間にか俺に背を向けた姿勢になっていた高津はこちらに顔を向けずに尋ねてきた。
「どんな感じっていってもなー。まぁ男ばっかで暑苦しい」

ちなみに今年の新入生数は少なく、二クラスしかない。
そして一応進学校でもあるため、学力別に暮らすわけした結果。一組の大半は男子。二組の大半が女子。と、いう構成になってしまった。

気が楽と言っちゃあ楽だが、もうちょっと女子がいたほうがクラスが華やいだと思う。
「まぁ、一組は入ったとたん海苔弁の匂いがするからね。いつも」
「マジで?」
「マジで」
気づかなかった。

「二組は?高津は頭いいんだろ?」
二組は皆頭が良いというイメージがある。
「よく言われる。でも、実際は一組とのバランスを取るために入れられた」
つまり、頭がよろしくないと。
「別に頭が悪いんじゃない。学校の勉強ができないだけ」
確かに、勉強が出来ないからって他も出来ないとは限らないし、逆に頭が良くても他の事に関しての知識が乏しい場合もある。
「それはわかってるよ」
「ならよかった」
しばらく沈黙が流れた。

「それでさ。何か部活やってるの?」
それでさって・・・。さっきと話繋がっていたのか?「あ。さっきのそれでさ。は、口癖だから。気にしないで」
さっきから俺の頭の中、読んでいるのか?
「まぁ、一応書道部やってるけど」
「へぇ、書道」
「以外だった?」
「うん」
素直なことで。
「上手なの?」
「まぁ、書道部と言って恥はないと思う」
「何か男で字が上手いってムカつく」
「でも、俺の知っている昔からの有名な書家は皆男だ。男と偽っていたんなら別だが」
「まぁ、女より男のほうが体力あるからね」
「まぁ、最終的にやる気のある奴が上手くなるんだけどな」
「ごもっとも」
そういうと、高津は立ち上がった。
「帰るのか?」
「電車の時間だからね」
「日原か?」
「益田」
「時間かかるな」
「早起きがまだキツイの」苦笑い気味にそう言う。
「今度書いたヤツ見してね。じゃあね石見総汰クン」
彼女は手を振って帰っていった。
姿が見えなくなると漫画に視線を戻したが、空いた隣から寂しいよー。と、言っている気がした。

この歳になって何を言っているのだと思ったが、そう思えたのだから仕方がない。
俺は漫画を棚に戻すと、図書館を出た。