「結構、緊張するもんですね」
俺は体育館のステージの裏にいた。
ステージ発表が始まってそろそろ二十分になる。
今、ステージにいるのは演劇部。とある学級のロングホームルーム中にあった出来事というギャグ系の芝居をしている。
反応は上々で、観客の笑い声がよく聞こえる。
「リラックス、リラックス。字が震えちゃうよ」
部長が肩をバシンバシンと叩く。
「曲も付いてるし、ノッたら集中しやすいと思う」
そう気を使ってくれる副部長も、自分の左の手のひらに指で何度も「人」という字を書いていた。
下書きの用紙に目をやる。高津が考えた詩だ。
アイツのことだ。この人ごみの多い中に率先して入るとも思えないが、頑張れと言われたんだ。頑張るしかない。
ステージにいた演劇部が裏に戻ってきた。
いよいよ書道部の番である。
「さ。張り切っていきましょう!」
円陣の中でオウ!と叫んだ。