放課後テリトリー

「でも、どうやって勝負つける気だったんですか?本人もいないのに」
「それなんじゃが、丁度、敏子ちゃんに似とる子が現れたんじゃけー。お譲ちゃんに勝負をつけてもらおうかと思うんじゃ」
「えー・・・」
「後生の頼みじゃ」
「そんな。老い先短い人に後生を使われても・・・・」
手を合わせる老人を手を横に振って渋る。
「なかなかはっきり言う譲ちゃんじゃ。そんなところもそっくりじゃ」
どこまでも似せたいらしい。
それならやってもらおうではないか。
「じゃあ、・・・・女性を落とす台詞を言ってください」
これには流石に周りの図書委員も口を挟んだ。
「お爺さんの口説き文句なんて聞いても何の得にもならないよ」
「大丈夫。私の今日の日記にでもするから」
「最近の若者は皆、一言多いのう」
それなら。ということで、お爺さん二人による口説き大会が始まった。
「じゃあトップバッターは出席番号が早かったワシからじゃな」
そう言ってちなみにこのお爺さんは眼鏡をかけている。
「はい。じゃあどうぞ」
眼鏡のお爺さんは咳払いをひとつする。
「・・・この満天の星空より君が綺麗じゃ」
「今は昼です」
秒殺。
「馬鹿じゃの。図書館というシチューエンションを使うんじゃよ」
「シチュエーションね」
眼鏡のお爺さんを押しのけて、ちょび髭のおじいさんが前に出た。
「この大量の本の中から気に入った本を探し出すことのように君に会ったときの喜びは大きいものだ」
「えー・・・・」
「お。脈アリか?」
「なんかヤダ」
頬杖を立てて答える。
「なんかって・・・・厳しいのう」
「ひむがしの 野にかげろひの 立つ月見えて かへりみすれば月かたぶきぬ」
「まんま、柿本人麻呂のパクりじゃないですか」
「五月雨をあつめて早し最上川」
「それは松尾芭蕉」
「閑さや岩にしみ入る蝉の声」
「それも。ってか、口説く関係なくなってるし」
二人の暴走が再び始まろうとしたとき、図書館の入り口からある人影が見えた。