放課後テリトリー

「ワシが敏子ちゃんの一番じゃった!」
「いーや。ワシじゃ!」
「・・・・・何これ?」
「・・・お爺さん同士の喧嘩」
同級生の図書委員が答えたとおり。図書館の中では老人が二人、何やら口論をしていた。
「何で先生とか先輩を呼ばないの?」
「だって、一番近かったから」
ため息をついた。
「わかった。ここはひとつ、誰が敏子ちゃんに一番相応しいか勝負じゃ!」
「ああ!望むところじゃーい!」
学校に入って、心が若返ったらしい。
とりあえず、このままでは他のお客さんに迷惑だ。
高津は会計用の席にドカッと座った。
「お二人さん」
そう声をかけると、二人とも息ピッタリに振り向いた。
「トシコさんってどんな人?」
今度は二人で顔を見合った。
「誰じゃ?」
「さぁ?でも、どこか敏子ちゃんに似てるのう」
「ワシも思った」
「「敏子ちゃん!」」
「千沙です」
仲のよろしいことで。
「それで、トシコさんってどんな人だったんですか?」
「おお。良い質問じゃ。敏子三世」
「千沙です」
「敏子ちゃんは。ここの卒業生なでな。あの頃は学校一清楚で可憐じゃった」
「ワシらもここの卒業生じゃぞ」
「そして敏子ちゃんは読書家じゃった。毎日放課後になると図書室に来ていたもんじゃ」
「ワシらも三年間ずっと図書室に通っとった」
「なるほど。それで思いは伝わったんですか?」
「いや。返事はこんかった。そのうち出雲から来た男と結婚した」
「それはまた・・・残念なことで」
しかし、この老人二人の左手の薬指には指輪がある。お互い別の女の人と結婚したらしい。
それなのになんでまた今更こんな争いを始めるのか。
「久しぶりに津高に来てみたらコイツに会っての。そしたら敏子ちゃんのことを思い出したけー。それじゃあ、あの時どっちがより敏子ちゃんに相応しかったかって話になったんじゃ」
だそうだ。