「ここはドラゴンが生息する世界。世界を闇で埋め尽くそうとする魔王はいました。それを阻止すべく、ある三人が立ち上がりました。一人は勇者ムラカミ。
一人は戦士スズキ。一人は魔術タカツ。同じ目的を持つ三人はパーティを組み、魔王を倒す旅を始めました」
高津の隣で演劇部がそう語った。
中に入ると、赤紫に塗りつぶされた板が立ちはだかり、迷路のようになっていた。
まず、ひとつめの角を曲がる。
「うお!なんだこれ?」
目の前には灰色で不自然な動きをする布があった。いや。中に入っているのは人間だとわかるが、動き方が不気味だ。
「これは魔物うごめくストーン。闇の番人です。魔王の元に着くためには、まずコイツを倒さねばいけません」
「・・・誰ですか?」
確か、入り口のナレーターでしたよね?
「私は皆さんの旅の手助けをする小さくて可愛いマスコット。とでも思ってください」
「小さくてねー・・・・」
高津はその160㎝後半はあるマスコットを見て、呟いた。
「コイツを倒さなければ前に進めません。さて、どういたしますか?一番、戦う。二番、戦う。三番、戦う」
選択肢を書いたホワイトボードを見せる。
「戦う。しかないじゃないか」
「いえ、勇者ムラカミ。それぞれの選択によって道は分かれるのです」
「じゃあ一番で」
「勇者は一番を選んだ。勇者は叫んだ。お前の母ちゃんでーべーそー!」
勇者は昭和の庶民の出のようである。
「魔物うごめくストーンは激怒した。勇者に突進してきた」
うごめくストーンがジャンプしながら近づいてきた。中には三人ぐらい入っているのがわかった。
「さあ頑張れ勇者」
可愛いマスコットが背中を押す。
「行け!勇者」
鈴木が応援する。
「逝け!勇者」
「漢字が違うぞ高津!」
何故か、やー。と、気の抜けた掛け声と共に、勇者ムラカミはベニヤ板で作られた剣を振った。
すると、中に入っていた演劇部三人が床に散らばった。
「勇者の振りかざした剣で、魔物うごめくストーンの内臓がバラバラになった!」
「怖ぇーよ」
「たらりらったらー。勇者のレベルが3上がった。暴言を覚えた。戦士と魔術師は傍観するを覚えた。薬草を手に入れた」
とんでもないものしか覚えてない。
「さぁ!次に行きましょう!」