放課後テリトリー

「一年二組の高津千沙です」
しっかり、挨拶してやがる。いや、当たり前だけれども。
「部長の領家です。皆練習中だからあんまり相手できないけど、ゆっくり見てってね」
部長も大概変わっている。普通はこの時期に見学なんて、邪魔以外の何者でもない。
「これが今年書くやつですが?」
高津も高津で、遠慮というものを知らないらしい。
「そうなの。そういば、あなたは確か図書委員だったわよね?」
「ええ。そうですけど」
「なんかいい詩とかない?こう、元気が出る感じの」
「詩ですか・・・あんまり読まないですからね。調べてみます」
高津は部長とすっかり打ち解けてしまったらしい。


部活が終わると、益田行きの電車まで少し時間があるので、図書館で暇を潰すことにした。
「言わせてもらうけど、ファイルの中に入れてあった字のほうが上手かった」
それは前より下手になっているということですか。
少しイラッときた。
「素人には分かんないだろうが、字によって上手く書けないもんなんだよ」
「素人でも分かるわよ。君の字には書く気を感じられないんだもん」

また、それですか。
なんでだ?書く気ありまくりだ。他の部員より書いているだろう。
わかっているはずなのになんでわかってくれない。
「っていうか、書く気というより書ける気がしない感じ!」
はぁ!?
もう駄目だ。
「分かったような口利くなよ!」
「はぁー?分かったようなって!分かったんだからしょうがないじゃん!」
しょうがないってなんだよ。
「帰る!じゃあな!」
図書館の戸も閉めず帰った。

やっちまった・・・・・。
これはヤバイだろ。
何がヤバイって、あれだ。怒鳴ったことだ。
図書館で大声出すこと自体駄目だが、女子に怒鳴ったってことが一番ヤバイ。
しかし、今日のはあっちも言い過ぎてるし・・・・。
駄目だ。どんな言い訳をしても怒鳴ったこっちが悪い。
あー!もう知るか!
とにかく帰る!