ところで。と、俺はカウンターの返却棚に目をやって言った。
「返却されてる本が溜まっとるんだけど」
「あらま!」
あらま!じゃねーよ。動きなさい。
本を取り上げると、渋々といった感じでカウンターに入った。
バーコードを機械に読み込ませ、返却完了のボタンを押すという作業を繰り返す。

だが、最後の一冊を機会は読み込まなかった。
「これ、まだバーコード貼られてないじゃん」
高津の手元の本は確かにバーコードシールが貼られていない。
「まだ貸し出しカード使っているのかな?」
本の後ろに貼ってある袋の中の貸し出しカードには、使用されたことがぎっしりと記されていた。
「人気なんだな」
「でも、帯出者氏名のところに日付の判子が押してあるから誰が借りたかわかんないね」
適当だな。この学校。
「にしても、結構頻繁に借りられてるね」
「結構古いし、あまり興味をそそられるとは思えないんだけどな」
「Me too」
何で英語なんだよ。
しかし、よく借りられている。長くても三日ごとだ。
三日で読める厚さとは思えない量なのだが。
「読む以外の目的の人が多いって訳かな?」
「その可能性は充分にあるねー」

本を受け取り、適当に開いてみた。
すると、真ん中辺りから長方形にへこんでいる跡を見つけた。
「なんだ?」
「何か挟んであったのかな?ほら、本についている栞用の紐とかも、結構跡付いてたりするじゃん」
「なるほど。・・じゃあ何が挟んであったんだ?」
「さあね」
沈黙が流れる。
「・・・気にならないのか?」
「別にー。そのうち分かるろー」
「そうかもしれないけど」
「何。気になるの?」
む。なんかムカつくぞ。
「別に、そういうわけじゃないけど」
「わかったら教えてあげるよ」
「だから気になってないし!」
「はいはい。そろそろ部活に行ったほうが良いんじゃない?」
そう言われて時計を見ると、確かにそろそろ部室に行かないと部長にどやされる。
「わかったよ。じゃーな」
「バイバーイ」