「行くよ」
いつの間にか着替えていた颯は
なんの躊躇いもなく
あたしの手を握った。
「…………」
なんかもういっか。
離してって言って
離してくれる相手ではないし。
「おっ、ラブラブだねぇ」
そんな冷やかしが聞こえたけど
聞こえないフリをして店を出た。
「ねぇ、どうしていつも手を繋ぐの?」
「…………さっき言った」
は?
「危なっかしいんだ。あんた」
それからあたし達は
言葉も交わさず歩き続けた。
その沈黙は気まずいものではなく
心地いいものだったけど。
あたしの少し前を歩く
颯の後姿だけを見て歩いた。

