「そういえば今日は颯に誘われて来たの?」
「え?いや、たまたま駅前で会って…」
無理やり連れて来られたとは
言えない。なんとなく。
「そうだよ、あんた何してたのあんなとこで」
いきなりあたしの横に
座ってきた一ノ瀬颯。
「おい、颯。まだお客さんいるんだからカウンター座るなよ!」
「もーみんな帰ったよ。あんたらがお喋りしてるあいだにね」
店内を見渡すと確かに
客は誰もいなかった。
どうやら1時間以上
大輝さんと話していたらしい。
内容はあんまり覚えてないけど。
「大輝働かなかったんだから片付け全部してよね」
「はいはい。悪かったって」
そろそろあたしも
帰ろうかと思っていたら
一ノ瀬颯があたしに話しかけてきた。
「で、何してたの?」
「え?」
「おい、颯。もう21時回ってんだし、麗ちゃんの家の人も心配すんだろ」
あ、
「あたし一人暮らしなんで…」

