お前に全て、奪われた。 Ⅰ




「ほら、ヒロのせいでセイが大変な事になっちゃったじゃん。」



大変な…事?


私は後ろを振り返ってセイさんを見た。



「…餓鬼、離れろ。」



…ぎゃ。


悲鳴を上げたかったけどもそれさえも声に出来ない程、セイさんは殺気を出していた。


それは、まるで般若の様で。


ヒロくんが泣いちゃうかも。


そう思った私の予想を見事に裏切り、更にぎゅーっと、力を込めて私に抱きついた。


極め付けには、あっかんべー。



「はあ、何煽ってんの。」



溜息をまたつく、白衣の人であった。



「餓鬼だからって調子に乗ってんじゃねえぞ。」


「僕面倒臭いの嫌いなんだよね、じゃあとはよろしく可愛子ちゃん。」



手をひらひらさせて、また部屋の奥に引っ込んでしまった。

こんな状況で置いていかれてしまった。