お前に全て、奪われた。 Ⅰ





「……老けてるか?」



ワントーン声を落として、何を勘違いしたのかセイさんはそう言った。



「ち、違うんです…!確かに私は20代ぐらいかなあ、と勝手に勘違いしてましたけど、決して老け顔とかそう意味ではなく…つまり、セイさんは普通の人より、大人っぽいんです!」



言い終えた私は何故か息切れをしていた。

それに、必死すぎてほとんど何を言ったのか覚えていない。




「大人っぽい顔は嫌いか…?」



そんな私の状態も知らず、セイさんは相変わらず何処か悲しそうに私に尋ねる。



「……えと、大人っぽい方の方がどちらかというと、好きです。」



「なら……いい。」



一瞬安堵の表情を浮かべまた、前に向き直った。


私は頭の上に?を掲げ、厳つい人は笑いを隠そうと缶コーヒーを一口含み気を引き締めた。