「…そうですよね…こんなにお世話になった人の名前も知らないなんて、本当失礼ですよね…。」
私が肩を落とすと、それをミラー越しに見ていた厳つい人がマジか…と、笑が消え驚きの表情を浮かべていた。
「……セイ。」
「セ、…イ…?」
「…俺の名前。好きに呼べ。」
…セイって言うんだ…。
名前が解った、たったそれだけの事なのにとても嬉しくなる。
セイ…さ、流石に呼び捨てはダメだよね…、と私が考えた結果"セイさんと呼ぶ事にした。
「…お前の名前。」
「…ぶはっ!」
また、厳つい人が吹き出した。
「一晩一緒に過ごしてるのにお互い全く名前も知らないなんて…あ、すみません。」
セイさんは、厳つい人を殺しちゃうんじゃないかっていうくらいの眼差しで睨んでいた。
それに気付いた厳つい人も直ぐに謝る。
そして少しの間を空けて再び、
「……名前。」
とだけ言って私を見つめた。



