「…。」
無反応。
というか、本当に聞こえてるのかな。
金色の瞳はただ、前を見据えていた。
沈黙の中で、私はとても重要な事に気が付いた。
この人の名前…知らない。
さっき、運転手の厳つい人が確か呼んでいたけどセ…セ…セ…何だっけな。
セなんとかだったのは覚えてるんだけど…うーん…。
いくら考えてもわからなかったので勇気を出して聞いてみる事にした。
「あの…とっても今更な質問ですけど大丈夫ですか?」
「…あぁ。」
金色の瞳が此方に視線を移す。
それだけの事なのにドキン…と、心臓が音を立てる。
「…貴方のお名前教えてもらえませんかね?」
おずおずと言うと、運転手の厳つい人が吹き出す。
「…ぶはっ!冗談上手いですね!」
と、笑われてしまった。



