全部、私からだった。

が、またしてもりっくんの携帯電話が忌々しい着信音を鳴らす。



携帯電話に視線を落としたりっくんの表情がたちまち強張り、『ああ、またか』と憂鬱な気持ちになった。



「ごめん、多恵、また――」

「仕事でしょ? いいよ、いってらっしゃい」


りっくんが最後まで言い終えるのを待たずに、かぶせるように言って、無理矢理に微笑んだ。

そうすることで、未練を断ち切れると思ったから。



りっくんは申し訳なさそうに苦笑して、

「すぐ戻るから、多恵、ここに居ろ。人、運ぶだけだからさ」

と、私の額にまた、いつものように唇を落とす。



「帰ったら、一緒に食べよう。それまで食うなよ。どんなに腹減っても我慢しろ、な?」

食卓に並んだ料理を見渡しながらそう言って、屈託なく笑う。