全部、私からだった。

料理中も、りっくんに邪魔をされてかなりの時間を要した。



後ろから抱きついてきて、「まずはこっちの味見」などと言いながら、私の耳たぶをハフッと甘噛みしたり。


多恵、多恵、とうるさく何度も呼ぶので仕方なく振り返ると、

「大丈夫だ多恵、俺が必ず助けてやる」

なんて言って、パックに入った未調理の豚ロースに、全力で呼び掛けながら心臓マッサージをしているし。



あまりにも鬱陶しいのと、プラス、揚げ物は危険なのとで、ご飯が出来るまでキッチンは関係者以外立ち入り禁止にした。



りっくんは、寂しそうにテレビの特番『警視庁24時』を見ていた。


「へっ、こんなもん全部やらせじゃねぇかよ」

などとブツブツ文句をたれながら。



出来上がった時には、何故だか凄く疲れ果てていて。

だけどもこれでようやく、私の手料理を美味しそうに頬張るりっくんが見られる、と幸せな達成感に満たされていた。