全部、私からだった。

けれど――

今日はそういう訳にはいかなかった。



舞台の中央で、グランドピアノに左手を添え、真正面遠くに視線を走らせた。


そしたら、客席と客席の間の通路の先、出入口の扉横に、愛しい人の姿を見つけてしまった。



明らかに仕事を抜けて来たのだとわかる、スーツ姿のりっくんが、壁に背を預けて立っていた。



そう言えば一度、今日のことをりっくんに話したことがある。


りっくんは、私の話を聞いていないようで、ちゃんと聞いている人だから。



私は、りっくんのそういうところも大好きだった。


違うな、今も大好きだ。

りっくんの全てが大好きだ。



私は、わたしは――


今でもりっくんを愛している。