全部、私からだった。

生徒たちの演奏が終わる頃、控室で衣装に着替えた。


ホルダーネックが大きなリボンになっている、淡いピンクを基調としたオーガンジードレス。


今日の為に買ってしまった。

いいんだ、後悔はしていない。



うん、似合っている。




舞台袖で待機している間、しきりに手の平に『人』の文字を指で書いた。


ああ、緊張する。

途中でド忘れしたらどうしよう。



それでも、一旦舞台袖を出て舞台の真ん中に立てば、緊張も不安も全て、まるでその場の空気に融け込んでしまうかのように、スーッと消えるのだ。


そうなったらもう、後は自分の10本の指に全てを委ねるだけ。



何も考えなくて良い。

考えたらいけない。