さらに一か月後。



私が勤めているピアノ教室の発表会で、生徒たちの演奏後、講師として私も演奏することになった。


演奏する曲は、リストの『ため息』。

かなりの難曲を自ら選曲した。



練習に没頭している間は、嫌なことを忘れられるから。

それに、これを成し遂げられたら、自分の中で何かが変わる気がした。


とても曖昧。でも人間の感情なんて、そんなもの。





発表会当日。


メイクはいつもより念入りにした。

りっくんと別れてから、お洒落の方はすっかり疎かになっていたから、鏡に映る仕上がった私は、随分と久しぶりに見る顔をしていた。



多分、かなり女子力落ちているんじゃないかな。

そんな不安を吹き飛ばそうと、鏡の自分に向かって、ニッと笑ってみた。